松田養蚕場の研究開発
RESEARCH
研究開発のスタート
代表・松⽥道夫は、東京農業⼤学在学中にシルクの⾮繊維利⽤に関する研究に従事。
シルクから機能性成分「シルクフィブロイン」を抽出する研究を⾏う傍ら、世界⽂化遺産の富岡製⽷場がある群⾺県富岡市にて純国産シルクを活⽤した町おこしに携わったことをきっかけに、⾃⾝が研究する新しい技術によって衰退しつつある養蚕業を活性化させるべく起業を決意。
⼤学卒業後、さらなる研究を続け、2009年に松⽥養蚕場を創業いたしました。
「水溶性フィブロイン」の開発と特許の取得
繭に⾝体を包み、繭のバリア機能で⾃らの⾝体を守る蚕。その蚕から⽣まれるシルクは、「繊維の⼥王」と呼ばれ、太古の昔から⼈々を魅了してきた天然素材です。上品な煌きを放つ美しい光沢とさらさらとした優しい触り⼼地。紫外線をカットし、まるで呼吸するかのように肌を快適な温度と湿度に保つ機能性。
これらはシルクの主成分「⾼分⼦シルクフィブロイン」が持っている特性です。
この「⾼分⼦シルクフィブロイン」は、⻑期にわたり医療分野で⼿術⽤の縫合⽷として使⽤され、⼈体との優れた親和性と安全性が証明されている天然素材として知られていますが、加⽔分解といった従来技術で低分⼦化するとシルク本来の機能性が失われてしまいます。
そのため、シルク本来の形(⾼分⼦)のまま利⽤することが理想的ですが「⾼分⼦シルクフィブロイン」は、そのまま⽔に溶かすと不安定となりゲル状に不溶化してしまう性質があるため、⽔に溶かした状態で安定化させることが困難とされてきました。
松⽥養蚕場では2014年、シルクの主成分である「⾼分⼦シルクフィブロイン」をシルク本来の機能性を維持した⾼分⼦のまま、⽔に綺麗に溶解する⾼純度の「⽔溶性フィブロイン」の開発に成功し、⽶国化粧品⼯業会(PCPC:The Personal Care Products Council)により世界初の美容成分として認定されました。
※国際命名法委員会:INC meetingにて承認・登録。INCI名「Soluble Fibroin」
翌2015年には、⽇本化粧品⼯業連合会においても新化粧品表⽰名称「⽔溶性フィブロイン」として登録。
そして2016年、⽇本国内において「⾼分⼦量シルクフィブロイン⽔溶液の製造⽅法および⾼分⼦量シルクフィブロイン粉末の製造⽅法」として特許を取得いたしました。
(※特許第6019506号)
SDGsの取り組み
SDGs
シルクの非繊維利用によるSDGs
シルク=⾝に纏うものという常識を覆した⽔溶性フィブロインの研究開発は、シルクの持つ素晴らしい特⻑を活かすことだけでなく、繊維化できない屑⽷や屑繭といった副蚕⽷を活⽤するために考えられたものでもあります。
この⾮繊維利⽤が可能になったことで、養蚕農家が時間と愛情をかけて育てた繭を無駄なく活⽤することができます。また、シルクを作る蚕がエサとする桑の⽊は、地球温暖化の要因となる⼆酸化炭素を吸収し、酸素を放出する性質があるため、地球に優しい産業であるともいえます。
地域活性化の取り組み
REGIONAL REVITALIZATION
エサとなる桑を栽培しながら蚕(かいこ)を飼育し、繭を⽣産する産業が養蚕(ようさん)です。
養蚕業は紀元前15年頃の中国を起源とし、その歴史は4500年以上。⽇本では弥⽣時代から始まったとされており、のちに世界⽂化遺産となる富岡製⽷場が1872年に設⽴されると、⽇本初の⼤規模な機械製⽷⼯場として⽣⽷を⼤量⽣産し、海外に輸出することで外貨を稼ぐ⽇本の殖産興業となりました。
昭和初期に⾄るまで輸出品の中⼼であり続け、⽇本の近代化に最も貢献したと⾔っても過⾔ではありません。しかしながら、化学繊維や海外品との価格競争等により、急速に衰退しました。松田養蚕場はそんな⽇本の伝統産業を活性化・伝承させていくため、地⽅⾃治体や企業と様々な取り組みを⾏ってきました。
群馬県富岡市の事例
富岡製⽷場がある群⾺県富岡市では、地元の“上州富岡産繭を使って、新たな名物となる商品を作るため「富岡シルクタンパク研究会」を発⾜し、町おこし「富岡シルクプロジェクト」を⾏いました。⾏政や地元企業とシルクタンパクを使⽤したサブレやシフォンケーキ、うどんなどの⾷品をはじめ⽯鹸、あぶらとり紙など様々な商品の開発を⾏いました。
愛媛県伊予市の事例
愛媛県⻄予市では、伊勢神宮で20年に1度行われている神聖な儀式・式年遷宮に奉納している伊予生糸(いよいと)と呼ばれる伝統のシルクを使用して、繊維化できないシルクから化粧品や食品を作る取り組みに技術協力いたしました。
シルク=身に纏うものではなく、シルク=上質なタンパク質という無限の可能性を
シルクに関わる全ての人と共有し、共に発展していけるよう
これからも魅力の発信に取り組み続けます。